皆さんは熱水噴出孔(ねっすいふんしゅつこう)や冷水噴出域(れいすいゆうしゅついき)を知っていますか?
深海生物について調べたり、深海に興味があるという方は聞いたことがあるのではないでしょうか。
熱水噴出孔は、地球上で最初の生命(初期生命)が誕生した場所であると言われています。
そもそも熱水噴出孔って何?と思いますよね。
熱水噴出孔とは簡単に説明すると、マグマに熱せられた海水が勢いよく噴き出すあなのことです。
冷水湧出域とは冷水湧出帯とも言い、熱水噴出孔ほど熱くはないけれど周りの海水よりは温かい場所のことです。
海底には熱水噴出孔や冷水湧出域と思われる場所がいくつもあり、そこには数多くの生物が生息しています。
ここでは深海の不思議な場所である熱水噴出孔や冷水湧出域について、わかりやすく解説していきます。
熱水噴出孔の発見
海底ではマグマが地中から湧き出して、海底面に巨大な割れ目を作っています。
そんな場所では、マグマに熱せられた熱い海水が噴水のように噴き出すと考えられていました。
1977年、アメリカの有人潜水調査船「アルビン号」に乗った研究者たちは、ガラパゴス諸島近くの深海2500mの海底でいくつもの熱水が噴き出す場所を発見。
その周りには、たくさんの見たこともない生物が生息していました。
しかし、この場所の最高水温は17℃であり、周りの海水(2℃)よりは暖かいけれども熱水と言うほどではありませんでした。
さらにその2年後の1979年、アルビン号は東太平洋の水深2600mの場所にある大きな割れ目を調査中、驚くべきものを発見しました。
そこには海底から煙突のようなものが立ち、そこから黒い煙のようなものが噴きあがっていたのです。
この煙の水温はなんと300℃以上。
地上での水の沸点は100℃であり、それ以上の温度になると水蒸気に変わってしまいます。
つまり、水温が300℃以上になるということは地上ではあり得ないことなのです。
ですが、深海では高い圧力がかかっているので100℃を超えても水が沸騰せず、水温が300℃を超えても液体のまま噴き出しています。
この黒い煙が噴き出す場所は「ブラックスモーカー」と呼ばれています。

ブラックスモーカーの熱水には鉛・亜鉛・鉄・銅などの硫化物が多く含まれていて、その熱水が海水と反応して黒色になるんダコ!
熱水の温度がこれより低く、含まれる金属硫化物が少ない場合は白い煙が出ていて、そこは「ホワイトスモーカー」と呼ばれているダコ。
ちなみに冷水湧出域の「冷水」とは、熱水噴出孔から噴き出している数百度の熱水ほどではない水のことで、周囲の海水よりも低い温度の水という意味ではありません。
むしろ、周りの海水温よりも高いことがほとんどです。
つまり、1977年に発見された熱水が噴き出しているが最高水温17℃の場所がいわゆる「冷水湧出域」であり、ブラックスモーカーがある300℃~400℃の熱水が噴き出している場所が「熱水噴出孔」というわけですね。
ブラックスモーカーには多くの硫化物が含まれており、これは人間にとって猛毒です。
しかし、そんな硫化物を目当てに集まるたくさんの深海生物が熱水噴出孔の周りには生息しています。
この発見は、深海にはほとんど生物は存在しないだろうというこれまでの常識をくつがえす大発見となりました。
熱水噴出孔の仕組み
地球の地下深くには1000℃を超える熱いマグマがあります。

ちなみに、マグマとはドロドロにとけている岩石などのことダヨ。
マグマが地中から地表に噴き出してしまうことを「噴火」、地表に出たマグマが固まってできた山を「火山」というヨ。
海底では海底下に海水が染み込み、海底深くまで染み込んだ海水はもっと深い場所にあるマグマによって熱せられます。
そして熱せられた海水は岩石の中にある様々な成分を溶かし込みながら、再び海底面にむかってあがってくるのです。
そのマグマに熱せられてあがってきた海水が、海底の穴から勢いよく噴き出している場所が熱水噴出孔というわけです。
また、ブラックスモーカーが噴き出している煙突のような部分は「チムニー」と呼ばれています。
チムニーは海底から噴出された海水に含まれる金属などが沈殿して成長したものです。
熱水噴出孔は生命の起源?
熱水噴出孔には多くの生物が生息していますよね。
実は熱水噴出孔こそ、地球で最初に生物が誕生した場所の最も有力な候補であると考えられているのです。
ではなぜ、熱水噴出孔が生命誕生の場の候補と考えられているのでしょうか?
地球が誕生したのは約46億年前、そして最初の生命が誕生したのは約38億年前と言われています。
生命が生まれたばかりの頃の地上は、火山が噴火し、酸素もほとんどなく、紫外線が降り注いでいました。
そのため最初の生物は、地上よりも環境が安定していた水の中で生まれたと考えられています。
そんな太古の海の環境に極めて近いとされているのが「熱水噴出孔」なのです。
熱水噴出孔にあるチムニーから噴き出す熱水には硫黄化合物、メタン、重金属など生物にとって有害な物質がたくさん含まれています。
ですが、そんな有害な物質から栄養を作り出すバクテリア(細菌)や古細菌が発見されました。
この発見により、最初の生命は硫化水素などの有害な物質から自分で栄養を作っていたのではないかと考えられるようになったのです。
熱水噴出孔で暮らす生き物たち
熱水噴出孔には有害な物質があるにも関わらず、たくさんの生き物が暮らしています。
前述したように、熱水噴出孔には有害な物質を栄養に変えるバクテリア(細菌)が存在しており、熱水噴出孔の周りで暮らす生物たちはそのバクテリアを利用して栄養をもらうことができます。
そのため、食べ物に困ることがありません。
例えば、熱水噴出孔に生息している「イエティクラブ」というカニは、うでの毛の中でバクテリアを育てており、うでをふって毛の中のバクテリアに栄養を与え、育ったバクテリアを食べます。
さらに、熱水噴出孔に生息している「チューブワーム」という生物は、管のような体の中にバクテリアを住まわせており、硫化水素や酸素をバクテリアに与え、そのバクテリアから栄養をもらって生きています。
その他にも、アルビンガイやシロウリガイ、エゾイバラガニ、スケーリーフット(ウロコフネタマガイ)など、たくさんの生物が暮らしています。
熱水噴出孔は、過酷な深海の世界のオアシスと言っても過言ではありません。
そんな場所だからこそ、たくさんの生物が集まっているのです。
まとめ
熱水噴出孔、冷水湧出域についてのお話はいかがでしたでしょうか?
- 熱水噴出孔や冷水湧出域には、生物にとって有害な物質が豊富に含まれている
- 熱水噴出孔は太古の海の環境に最も近いとされている
- 熱水噴出孔には有害な物質を栄養に変えるバクテリアが暮らしている
- そんなバクテリアを求めて、たくさんの生物が熱水噴出孔に集まっている
ということが分かりましたね。
他にも深海に関するいろいろな疑問や気になること、紹介してほしい深海生物などがいましたらお気軽にコメントしてください。
これからも何か情報が入り次第、更新していきますのでよろしくお願いいたします。
最後までご閲覧いただきありがとうございました。