皆さんは「ヌタウナギ」という生物をご存知でしょうか?
名前に「ウナギ」と入っていますが、一般的に知られているウナギとは生物学上あまり近い関係ではありません。
さらに、ヌタウナギは魚類でもありません。
「え?じゃあ何類なの?」と思いますよね。
ヌタウナギは無顎類(むがくるい)というカテゴリーに分類されています。
ヌタウナギはその見た目からあまり好ましいイメージは持てないという方が多いと思いますが、実はとても利用価値の高い生き物なんですよ。
ここでは、そんなヌタウナギについてご紹介します。
ヌタウナギの生態と特徴について
ヌタウナギは無顎口上綱(むがっこうじょうこう)ヌタウナギ綱ヌタウナギ目ヌタウナギ科に属している生物です。
ヌタウナギとして知られる生物は世界中に70種類ほど存在しており、そのほとんどが深海に生息しています。
とはいえ、生息水深は5~750mととても幅広いです。
上記でも言いましたが、ヌタウナギは厳密にいうと魚類ではなく無顎類というカテゴリーに分類されています。
ですが、広い意味では魚類(無顎魚類)として分類されることが多いです。
そもそも無顎類とは何なのでしょうか。

無顎類は、脊椎動物のうちアゴを持つ顎口類(がっこうるい)以外の動物のことダコ。
無顎類のほとんどのグループはすでに絶滅していて、今ではヤツメウナギ類とヌタウナギ類しか属していないダコ。
無顎類は名前の通り、アゴを持たない生物ということですね。
無顎類は脊椎動物の起源と進化を考えるうえでとても重要な動物であると考えられており、生きている化石としても知られています。
ヌタウナギの体は細長く、ウナギやアナゴのような形態をしています。
体は粘液でおおわれており、体の両側には1~16対の鰓孔(えらこう)があります。
骨格はほとんどが軟骨で、体はとても柔らかいです。
ヒレは胸鰭や腹鰭は持っておらず、尾鰭のみがあります。
ヌタウナギの体にはヌタ線と呼ばれる粘液の放出孔が約70~200個ほどあり、危険を感じるとこのヌタ線からネバネバとした粘液を出します。
この粘液は「ヌタ」と呼ばれており、このヌタは捕食あるいは防御に用いられ、敵のエラなどに入ると窒息してしまうこともあるそうです。

ちなみに、ヌタウナギは自分についたヌタは体で結び目を作って取ることができるダコ。
鼻の穴に入ったヌタはくしゃみをして出すんダコ。
眼は退化しており、皮膚に埋もれているため視力はほとんどありません。
そのかわり、大きな鼻の穴と3~4対の口ひげがあります。
ヌタウナギは腐肉食性で、主にクジラや大型魚類の死骸に集まる姿が観察されています。
ヌタウナギには大きな鼻の穴があるので、その鼻で死体の臭いを嗅ぎつけて集まり死肉をむさぼるのです。
死骸だけでなく生きた獲物ではゴカイや頭足類、甲殻類も捕食していることが分かっています。
ヌタウナギは無顎類なのでアゴがありませんよね?
どのように獲物を捕食しているのでしょう。
ヌタウナギの舌の上にはノコギリのような歯が2列に並んでおり、この歯を使って獲物の肉を削りとって食べます。
ヌタウナギの口の写真がこちら。
このエイリアンのような姿、怖すぎます。
そしてヌタウナギの捕食シーンもとても怖いんです。
その捕食シーンの動画がこちら。これも閲覧注意です。
歯をむき出しにするシーン、ゾッとします。
ヌタウナギはこのようにして魚の死体を貪り食うのです。ひぃぃ
ヌタウナギの粘液が原因でスリップ事故!?
2017年の7月13日、アメリカ西部のオレゴン州でヌタウナギを積んだトレーラーが横転し、後続車4台がヌタウナギの粘液にハンドルを取られ、スリップしてしまうという事故が発生しています。
トレーラーには韓国への輸出用に約3.4tのヌタウナギが積まれていたそうです。
トレーラーの運転手がハンドル操作を誤って横転し、約150mにわたって生きたままのヌタウナギが散乱。
ヌタウナギは刺激を受けると粘液を放出しますので、そこは粘液地獄に。
後続の乗用車4台が次々にスリップ事故を起こすという大惨事になりました。
OSP @OregonDOT & @LincolnCountySO on scene overturned #Slime #Eel truck Hwy101 MP131 closed. #Cleanup on Aisle 101 pic.twitter.com/Z9s9XbQ247
— Oregon State Police (@ORStatePolice) July 13, 2017
Thanks @OregonDOT pic.twitter.com/SmwHtWLeQ3
— Depoe Bay Fire Dist. (@DepoeBayFire) July 13, 2017
ヌタウナギ恐るべし!
ヌタウナギは利用価値の高い生物!?
ヌタウナギは見た目も生態もグロテスクで気持ち悪いですよね。
そんなヌタウナギに好感を持てるという方は少ないと思いますが、実はヌタウナギはとても利用価値の高い生き物なのです!
ヌタウナギが出す粘液(ヌタ)はとても粘り気が強く、人間の力でも簡単に切ることはできません。
ヌタウナギの粘液は微細な繊維で構成されており、直径はわずか1ミクロンで人間の血球や毛髪よりもはるかに細いことが分かっています。
この繊維はとても丈夫で軽く、ヌタウナギの粘液を糸にする研究が進んでいます。
ヌタウナギの粘液から糸ができればナイロンの代わりになる強い糸ができ、とても丈夫な布ができると考えられているそうです。
ナイロンは石油から作られている糸なので、ヌタウナギの粘液で代用できれば地球の為にもなるのです!
さらに、ヌタウナギの革はイールスキン(eel skin)と呼ばれ、韓国やアメリカではイールスキンで作った財布などが革製品として流通しています。
ヌタウナギのグロテスクな見た目はどこへ?(笑)
とても素敵な財布に大変身していますね。
イールスキンは牛革よりも強度があり、艶やかで軽いのが特徴です。
イールスキンの専門店もありましたので、興味のある方は覗いてみてはいかがでしょう。
韓国ではヌタウナギ料理が人気!?
なんと、韓国ではヌタウナギが食べられているそうです。
いや~びっくり!
見た目が見た目なだけに、まさか食べられているなんて思いませんでした。
ところで味はどうなの?と気になりますよね。
ヌタウナギ、とても美味しいそうです(笑)
ヌタウナギは生でも食べられるらしく、「コリコリとした歯ごたえが特徴で食感はホルモンに近い」「旨味・塩味が強く、醤油をつけなくても美味しく食べられる」んだとか。
う~ん…さすがに生で食べる勇気はないな。
と思ったアナタ。私も同感です(笑)
とはいっても、通常は加熱調理してから食べられることが多いそうです。
料理されたものは美味しそうに見えますね。
加熱調理しても独特の歯ごたえや旨味は十分に楽しむことができますのでご安心ください。
韓国では日本やアメリカから輸入されるほど人気の食材です。
ちなみに日本でも一部の地域で食べられているそうですが、国内ではほとんど広まっていません。
YouTubeでは「ヌタウナギを食べてみた」という動画が意外にも多かったので、いくつか載せておきます。
ヌタウナギを捌く映像もありますので、そのような映像が苦手な方はご注意ください。
まとめ
ヌタウナギについてのお話はいかがでしたでしょうか?
見た目は不気味なヌタウナギですが、実はものすごく利用価値が高いことには驚きました。
なんでも見た目で判断するのはよくないですね。
他にもヌタウナギに関するいろいろな疑問や気になること、紹介してほしい深海生物などがいましたらお気軽にコメントしてください。
これからも何か情報が入り次第、更新していきますのでよろしくお願いいたします。
最後までご閲覧いただきありがとうございました。