皆さんはチューブワームという生物をご存知でしょうか?
チューブワームとは、深海の熱水噴出孔や冷水湧出域の周辺に生息している生物です。
見た目は植物のようにも見えますが、れっきとした動物なんですよ。
チューブワームは環形動物に分類されていますので、身近な生物でいうとゴカイやミミズの仲間です。
そんな「チューブワーム」についてご紹介したいと思います。
チューブワームの生態と特徴について
チューブワームは環形動物門多毛鋼(かんけいどうぶつもんたもうこう)ケヤリムシ目シボグリヌム科に属している生物です。
体長は数十センチメートルで、熱水噴出孔や冷水湧出域に生息しています。
1977年にガラパゴス諸島沖の熱水噴出域から、アメリカの潜水調査船「アルビン号」によって発見されました。
発見当時は分類上の所属が分からず、チューブ状の棲管(せいかん)に入り、入り口から頭だけを覗かせている虫のような姿から「チューブワーム」と名付けられたそうです。
ちなみに、チューブワーム(tubeworm)とは英名で、和名では「ハオリムシ」と呼ばれています。
チューブワームは異様な見た目をしているので、発見後もしばらくは分類学上の位置が決まらなかったのだとか。
チューブワームの白い管の表面はカニの甲羅のような成分で出来ています。
カニの甲羅はとても硬いので、チューブワームの白い管も硬く頑丈だということですね。
そんな頑丈な管からは赤い花びらのようなものが見えています。
実はこれ、チューブワームの「エラ」なんです。
口などではなく、まさかのエラ!
さらに、チューブワームには赤い血液が流れているそうです。
なんだかとっても不思議というか不気味ですね(笑)
チューブワームには口や肛門がありません。
つまり、何も食べずに生きているということです。
「何も食べずに生きていけるなら、それは動物でなく植物なのでは?」と考える人もいると思います。
ですが、それはあり得ません。
なぜなら、植物というものは「光合成」をすることが特徴ですよね。
光合成とは光エネルギーを使って、水と二酸化炭素から炭水化物(たとえばデンプン)を作ることです。
つまり光合成には太陽の光が必要不可欠ということ。
ですがチューブワームが発見された深海には、太陽の光が届きません。
そのことから「チューブワームは植物ではない」ということになります。
では、チューブワームはどのようにして生きるために必要な栄養をとっているのでしょうか?
チューブワームの白い管の中にある体の一部には、バクテリア(細菌)がぎっしりと入っています。
驚いたことにチューブワームはそのバクテリアに「光合成とほぼ同じこと」をやらせているのです。
チューブワームは体の中にいるバクテリアから栄養をもらって生きているということになります。
その代わりに、チューブワームは赤いエラから硫化水素や酸素を体の中にとり込み、バクテリアに与えています。
チューブワームとバクテリアはお互いに必要な成分を供給しあって生きているのですね。

ちなみに、硫化水素は人間にとっては猛毒だヨ。
このチューブワームの性質は、太陽の光がなくても生物が生きていける仕組みとして注目されています。
チューブワームの仲間とチューブワームが見られる水族館
チューブワームの仲間には、「ガラパゴスハオリムシ」や「サツマハオリムシ」などがいます。
ガラパゴスハオリムシはチューブワームの仲間の中で最も大きく、全長は約3mにもなります。
サツマハオリムシは鹿児島湾などに生息していて、ハオリムシ類の中では最も浅い海に生息しています。
サツマハオリムシは新江ノ島水族館やいおワールドかごしま水族館などで展示されていますよ。
新江ノ島水族館
【住所】
〒251-0035
神奈川県藤沢市片瀬海岸2-19-1
【お問い合わせ】
電話:0466-29-9960
【公式HP】
https://www.enosui.com/
いおワールド かごしま水族館
【住所】
〒892-0814
鹿児島県鹿児島市本港新町3-1
【お問い合わせ】
電話:099-226-2233
FAX:099-223-7692
【公式HP】
http://ioworld.jp/
チューブワームの寿命は?
皆さんはチューブワームの寿命はどのくらいだと思いますか?
ある研究チームがチューブワームの先端に印をつけて、1年後にその印から伸びた長さを測り、元の全長と比べて寿命を計算するといった調査を行いました。
その結果、チューブワームの寿命は250年以上という結果が出たそうです。
さらに大量の個体を採取して研究を行ったところ、その中で死亡していた個体がわずか0.67%という驚くべき数値が確認されました。
これは異常な数値であり、チューブワームは限りなく不死身に近いという研究結果も出ています。
寿命は約250年以上だと推測されていますが、もしかすると500年以上生きているチューブワームもいるかもしれないと考えられているそうです。
チューブワームは何故、これほど寿命が長いのでしょう?
深海は私たちが住んでいる地上よりもメタボリズムのスピードが落ちるということが分かっています。
つまり、深海と地上では生物が成長するスピードが全く違うのです。
それにより深海の生き物は長寿であったり不死身であったりする…ということらしいです。
やっぱり深海は未知の世界ですね。
まとめ
チューブワームについてのお話はいかがでしたでしょうか?
やはり深海には不思議な生物がたくさんいますね。
チューブワームには生物が生きていくためのヒントがたくさん詰まっており、1977年のガラパゴスハオリムシの発見は20世紀最大の発見のひとつと言われているそうです。
他にも深海生物に関するいろいろな疑問や気になること、紹介してほしい深海生物などがいましたらお気軽にコメントしてくださいね。
これからも何か情報が入り次第、更新していきますのでよろしくお願いいたします。
最後までご閲覧いただき、ありがとうございました。