皆さんはマッコウクジラをご存知ですか?
「聞いたことはあるけど詳しくは知らない」という方がほとんどだと思います。
マッコウクジラはクジラの中でも最も高い潜水能力があり、軽く2,000mは潜ることができます。
同じクジラでもヒゲクジラ類の潜水深度は200~300mほどとされているので、マッコウクジラの潜水能力の高さがわかりますね。
ここでは、ハクジラ類の中でも特殊な深海潜行型として進化適応を遂げたマッコウクジラについてご紹介したいと思います。
マッコウクジラの生態と特徴
マッコウクジラは、鯨偶蹄目(くじらぐうていもく)マッコウクジラ科マッコウクジラ属に分類されるクジラで、ハクジラ類の一種です。
全長は10~20mでハクジラ類の中でも最大と言われており、生息地は全世界の海です。
全てのクジラ類の中で最も大きな性差があり、オスの標準的な体長が約16~18mなのに対して、メスの標準的な体長は約12~14m、体重もオスが約50tなのに対し、メスは約25tほどです。
マッコウクジラは表層と水深200~3000mを行き来して暮らしており、一生の3分の2にあたる時間を深海で過ごしていると考えられています。
クジラは哺乳類なので、海に潜っても海面に出て呼吸をする必要がありますよね。
ですが、マッコウクジラは全身の筋肉にミオグロビンという酸素を蓄えることのできるタンパク質を持っているので、一度呼吸をすれば1時間以上も潜水することができるのです。
また、マッコウクジラは約10分で水深1000mまで潜水することができると言われています。
マッコウクジラの食糧の90%以上はイカ類といわれており、ダイオウイカやダイオウホウズキイカなどの獲物を求めて深海に潜ります。
大きな体は3分の1が頭部で、頭には大きな脳と25℃で固まる脳油が詰まっています。

脳油とは鯨蝋(げいろう)とも呼ばれているマッコウクジラの頭部に詰まっている油脂のことだヨ。
高級ロウソクや石鹸、精密機械用の潤滑油として重宝されてたヨ。
マッコウクジラは潜水する前に海水を鼻の穴に通し、脳油を冷やして固まらせることで体が浮かないようにして潜っていきます。
浮き上がるときは海水を吐き出し、体温で脳油を温めて液体にすることで体を浮かせやすくするのです。
その他にも、エコロケーションを用いて獲物の位置をさぐったり、家族と会話をしたりすると考えられており、強力な音波で獲物を動けなくさせることもあるそうです。

エコロケーションは自分が出した「音」の反響を受け止めることで、周囲の状況を知ることができる能力っス!
イルカやコウモリにもエコロケーション能力があるっス!
マッコウクジラは家族との絆がとても強く、仲間の群れがシャチや捕鯨船などに襲われた際に救出にくることもあります。
また、群れを守るために捕鯨船をオスが攻撃して沈没させたという例も存在するようです。

家族思いで素敵ダコ。
マッコウクジラとダイオウイカ
マッコウクジラはダイオウイカの天敵としても知られていますよね。
マッコウクジラの主食はイカ類であり、浜に流れ着いたマッコウクジラの死体の胃の中からダイオウイカの痕跡が発見されることがあります。
ダイオウイカのような大型のイカばかりを食べているのかと思われがちですが、マッコウクジラが食べるのはクラゲイカやユウレイイカなど、小型のイカがほとんどです。
ダイオウイカは大量に生息している小型のイカと違いとてもレアな生物なので、マッコウクジラもほとんど食べられない貴重な獲物なのかもしれませんね。
よくマッコウクジラとダイオウイカが戦う構図の絵を見ますが、実際に戦ったりすることはあるのでしょうか?
もし戦っているとすれば、どちらのほうが強いのでしょう。
その答えは、マッコウクジラのほうが圧倒的に強いという考えがほとんどです。
マッコウクジラとダイオウイカは「食うもの食われるもの」という関係でしかありません。
ダイオウイカはマッコウクジラに捕まったら、ほぼなすすべなく食べられてしまいます。
というのも、マッコウクジラのような大型のハクジラ類は音波を出して獲物を一瞬動けなくさせて捕らえることができると考えられています。
また、ダイオウイカは最大で18mと言われていますが、その半分以上が触腕であるため体のサイズもマッコウクジラのほうが有利なのです。
マッコウクジラの頭部の皮膚に吸盤の爪痕や引っかき傷が多いことから、マッコウクジラと深海にいる巨大イカたちの戦いというような構図が多いのだと思います。
海の中で最強の生物はマッコウクジラなの?
海の中で最強の生物は一体なんなのでしょう。
深海の巨大生物ダイオウイカをも食糧とするマッコウクジラが最強と考える人もいるかもしれません。
ですが、クジラの唯一の天敵と言われているシャチも海の最強生物のランキング入りをしています。
では、シャチとマッコウクジラはどちらのほうが強いのでしょうか。
シャチは体長6.7m、体重5.4tにも成長する海棲哺乳類で、時速70㎞で泳ぐその瞬発力からとても強力な捕食者として知られています。
非常に頭が良いことでも有名ですよね。
その高い知能で、弱っているクジラや子どもクジラを群れでの連携攻撃で襲うと言われています。
ただ、マッコウクジラの成体とシャチの成体が1対1で戦うとすれば、マッコウクジラのほうが圧倒的に体が大きいため有利なのではないでしょうか。
マッコウクジラは優れた潜水能力もあるので、深海に逃げることも可能ですね。
シャチとマッコウクジラ、どちらも海の最強生物ランキングに入るのは納得です。
最終的に海の最強はどっちなの?と思いますよね。
海の中の最強生物ランキング第一位は、シャチでもマッコウクジラでもなく「シロナガスクジラ」であるという意見が一番多いようです。
やはり、生物史の中で最大である全長20~34m、体重80~190tの巨体が最強と呼ばれる一番の理由なのではないでしょうか。
マッコウクジラについての豆知識
ここで、マッコウクジラについての豆知識を2つご紹介したいと思います。
① マッコウクジラという名前の由来
マッコウクジラとは和名なのですが、漢字表示で表すと「抹香鯨」となります。
古代からアラビア商人が取り扱い珍重されてきた品に、香料であり媚薬や医薬でもある龍涎香(りゅうぜんこう)というものがありました。
この龍涎香の正体はマッコウクジラの腸内結石であり、マッコウクジラの龍涎香が抹香(まっこう)に似た香りを持っていることから、抹香鯨と呼ばれるようになったと言われています。

抹香とはシキミの葉・皮を粉にして作った香のひとつで、粉末状の香のことだヨ。
ちなみに、英名であるsperm whaleの由来は、マッコウクジラの頭部から摂取される脳油(鯨蝋)が精液に似ていることからsperm whale(精液クジラ)と呼ばれるようになったそうです。
② マッコウクジラの歯
マッコウクジラの歯は下顎に20~26対の円錐形になっており、それぞれの歯はなんと1kgもの重さがあります。
商業捕鯨が禁止される1986年以前には商取引されおり、ペンダントやイヤリングなどのアクセサリーや工芸品として加工され、人気があったそうです。
商業捕鯨が禁止された今では、新規のものは手に入らないので非常に貴重なものとなっています。
まとめ
マッコウクジラについてのお話はいかがでしたか?
マッコウクジラの高い潜水能力の秘密や、ダイオウイカとの関係性、豆知識などをまとめてみました。
皆さんが知りたかった情報はありましたでしょうか。
他にもマッコウクジラについての疑問や気になることがあれば、お気軽にコメントしてくださいね。
なにか情報が入り次第、記事を更新していきますのでよろしくお願いいたします。
最後までご閲覧いただき、ありがとうございました。