超深海層の水圧にも耐えられる調査船「しんかい6500」

そんな優秀な調査船「しんかい6500」の仕組みや特徴をお伝えします。

耐圧穀
コックピットは内径2.0mの球(耐圧殻といいます)の中にあります。この球(耐圧穀)は、軽くて丈夫なチタン合金でできており、1㎠あたり約680kgという水圧がかかる深海で、3名の乗員が安全に調査活動を行えるようになっています。そして繰返し何度も深海を往復できる高い信頼性も得ているのです。
マニピュレータ
また、マニピュレータという耐圧殻内からパイロットが遠隔操作をすることができるロボットハンドもあります。このマニピュレータはチタン製で軽量、高強度であり、マスター・スレーブ式油圧7軸制御なので操作性が良く、比較的容易に複雑な作業が行えます。水中では約100㎏のものを持ち上げることができるので、海の生物や海底の岩石の採取、採水器による熱水噴出口からの熱水の採取などの海底での作業にはなくてはならないものです。
覗き窓
「しんかい6500」には、前方と左右に合計3つの覗き窓があります。乗員はこの窓から深海を直接見ることができます。深海の高い水圧に耐える必要がある一方、水圧によって僅かに変形する耐圧殻に追従する柔軟性も不可欠なので、この覗き窓は厚さ138mmのメタクリル樹脂によってできています。
投光器
深海では水深200mを過ぎると太陽の光はほとんど届かなくなってしまいます。そのため「しんかい6500」には投光器がつけられており、1灯で自動車の強力なヘッドライト3~4個分の明るさがあります。
スラスタ
スラスタとは水中で自由に動き回るために水を噴き出す装置です。筒の中に電動機で動くプロペラが入っています。水平、垂直、メインのスラスタがそれぞれ2基ずつ合計6基が装備されています。
主蓄電池
「海の中には空気がないので、エンジンが使えません。そのため「しんかい6500」では専用に開発された2台の油漬均圧型リチウムイオン電池を主蓄電池として使っています。潜航で使用した電池は潜航終了後、夜の間に充電できるので、効率よく潜航作業を行うことができます。
浮力材
100ミクロン以下の中が空洞の小さなガラス球(ガラスマイクロバルーン)をエポキシ樹脂で固めたもので、深海の高圧環境に耐えうる強度と浮力を持ったこの浮力材が、潜水船の隙間という隙間にぎっしり組み込まれています。有人潜水調査船は浮くように造られており、この浮くように造られた潜水船に「おもり(バラスト)」を積むことで潜航します。
水中通話機
しんかい6500は母船と繋がっていないため、何からも引っ張られずに自由に動き回ることができます。母線との通信は無線で行われますが、水中では電波がないため音波を使った無線電話が使われています。
TVカメラ、スチルカメラ
しんかい6500は人が深海へ行くためにつくられた船ですが、より多くの人に深海で見たものを伝えるためにハイビジョンカメラ2台、デジタルカメラ1台を装備して、映像を記録に残しています。調査目的に応じて追加のカメラを搭載することもあります。
サンプルバスケット
観測機器や生物・岩石などのサンプルを搭載するための可動式のサンプルバスケットを前方左右に1個づつ装備しています。搭載可能重量は左右とも100kgfですが、潜航深度により潜水調査船の浮力が変化する為、目標とする深度により減少する場合があります。

このようにしんかい6500には、様々な機能が搭載されています。

しんかい6500には、2人のパイロットと1人の研究者の合計3名が乗船することができます。

巨大地震が起こるメカニズムや地球内部の動きを調べたり、光がなく高圧低温という特殊環境下に生息している生き物たちの生態など、海底で色々な調査研究を行っています。

支援母船「よこすか」

「しんかい6500」は単体では機能しません。

調査航海に出るときは必ず支援母船「よこすか」に乗せて世界中の海へ調査に出かけます。

「よこすか」には潜水船を整備するための格納庫や着水揚収するためのクレーン、潜水船の位置を測る測位装置などの設備が備わっています。

また、研究者が海底で採取したサンプルを研究するための研究室などがあり、「しんかい6500」の基地であると同時に「浮かぶ研究所」の役目も担っているのです。